ニューヨークに来てから早いもので2ヶ月が経ち、気持ちはラストスパートに入りました。
今日はこの2か月間で少し思ったことを記載したいと思います。
プロフィールにも記載していますが、私は6歳からフィギュアスケートという競技を選手という立場で関わり、全日本選手権や国体など様々な大会に出場してきました。
朝晩の練習を週6日こなすという生活を16年間も行っていたということで、そういった環境から数名の有名選手とも親交があり一線で活躍する選手の生活や考えていること、苦悩なども身近に感じてきたました。(そのつもりです)
そうした背景から、今まで「スポーツを支える仕事」を考える上で、私は比較的選手目線でいろいろ物事を考えてきたということに、ここ最近気が付きました。
実はスポーツ業界に携わっている方の多くは、もちろん一線で活躍した元選手も多くいますが、大半は「観ることが好き」で携わっている人が多いなと感じています。
スポーツが好き、スポーツに関わる仕事に就きたい、という気持ちは同じですが、スポーツを観ている角度が恐らく若干違うので、各場面で疑問に思う点も若干ずれているのかなと思っています。。
そのためなのか、「選手のスキルをどう向上させれば一般に認めてもらえるか」、「スポーツの良さを選手を通してどう伝えられるか」という部分が重要だと思ってました。
またエンタメ要素があればスポーツじゃなくても別にいい、「スポーツ自体の良さ」を伝えなければ、とばかり考えていました。
しかし実際にアメリカに来てプロのスポーツ現場を生で見てみると、もちろん観客はスポーツを観て楽しんでいるのですが、試合をずっと真剣に観ているというよりは、スタジアム・アリーナのいろいろなところを訪れて、その「空間」を楽しんでいるというように感じました。
そしてこの「空間」を楽しんでいる人がお金を投じており、現在のアメリカスポーツ産業が築き上げられているというところまでは、なんとなく理解できた気がします。
このことから、「スポーツを見せるだけではなく、それに付随する多くの要素を取り入れていかないと産業としての発展はないのではないか」ということが自分にとって一つの大きな問題提起として挙げることができました。
その点については、アメリカに来て気づけて本当に良かったなと思うのですが、一方で、選手目線に立ち返ってみると、スポーツ以外の要素がスタジアム・アリーナが増えることについて、「選手はどう思っているのだろう」という疑問が生まれました。
球場の空間づくりは観る側、支える側の視点であることが多いと思っており、実際に「する側(プレーヤー)」の意見はどこまで反映されているのだろうということです。
ここであるエピソードを思い出しました。
私が大学生の時、バレーボール部に所属している同じゼミ生が、自身の論文で日本でバレーボールの試合をするときにジャニーズを起用することに疑問を呈していました。
会場がジャニーズファンで埋め尽くされている、バレーボールを見ずジャニーズを見て満足して帰る人がいるということで、本当にバレーボールを見たい人が見ることができてないのではないかという意見です。自身がバレーボールに関わっている以上プライドもあったのだと思い、その点について当時共感できる部分がありました。
実際これは世間でも「?」と感じている人が多かったと思いますが、結果的にお客さんは集まりました。バレーボールのファンになる人も中にはいたと思います。バレーボール協会にとってはプラスになった部分が多いと思います。
しかしこのゼミ生が感じたあの空間への違和感。一アマチュア選手でしたが、選手側としてはあまり受け入れたくない環境だったのかもしれません。
バレーボール協会としてはジャニーズをきっかけにバレーボールを楽しんでもらう人が増えればという考えで行った施策であり賛否両論あったと思いますが、スポーツ以外の要素をプラスして観客を呼び込むという意味では、実はアメリカでも盛んに行われています。
例えば、今年リニューアルされるアトランタにあるPhilips Arenaには、理髪店を設置してそこから試合を観ることができたり、またスイートルームにシミュレーションゴルフを設置するなど、アリーナ競技とはあまり結び付かないような設備を設置して、来場する人々を楽しませようとしています。
この取り組み斬新ではあり観客からは、様々なアトラクションが増えて非常に楽しみなことだと思います。
またもし選手が「スポーツと関係ない要素が増えて心外だ」と思えば、そのことを訴えることも可能だと思われますが、そのような声は聞かれないため受け入れられているのだろうと推測されます。
しかし、理髪店から試合を観られたり、試合を観ずにシミュレーションゴルフを楽しんでいる観客の存在を選手から認められる要因はどこにあるのでしょうか。
ここで大きな違いとなるが、このような施策によって「きちんと選手へ還元されるか」だと思います。
アメリカのプロスポーツ選手が豊かな生活を送れているのは、もちろん選手自身の競技スキルが大きいのですが、「試合に足を運んでくれているファンのおかげ」という部分は理解している、というより当たり前の感覚でいると思います。
一方日本のプロ選手はどうでしょうか。
バレーボールの例だとジャニーズ目当てで来場するファンが多くのお金を落としていると思いますが、どこで選手に還元されているのでしょうか。これは、実際ファンが増え、スタジアム・アリーナに足を運んでくれる人が増えることによって、選手の置かれている環境が改善されたり、生活が豊かになったりするということを理解し経験していないとわからないことだと思います。
気になったので、最近10年間のプロ野球のセリーグ・パリーグの観客動員数と選手平均年俸の推移を比較してみました。青色が観客動員数で黄色が選手の平均年俸の推移になります。
ご覧の通り、パリーグは観客動員数の増加に比例して、選手平均年俸も増加しているのがわかりますが、セリーグは残念な状況です。いくら球場に足を運ぶお客さんが増えても、選手の懐に反映されていないのがわかります。
この要因については今回言及はしませんが、ファンが増えてスポーツの空間が楽しいものになれば、どういう状況に変化するのか選手自身が体感しなければ、選手と運営側が共に行う「スタジアム・アリーナの楽しい空間作り」は実現できないのではないでしょうか。
先日このようなニュースを目にしました。
■リプレー検証中を退屈させないためにどうすべきか 「26歳メジャーリーガー」の場合
これがどれくらいの人にウケていたかどうかはともかくとして、サンチェス選手がリプレー検証中の空いた時間を楽しいものにしようと思って取った行動であることには間違いありません。
このように、運営側だけでなく、選手も球場・スタジアム・アリーナの楽しい空間作りの一助を担うよう意識を変えていく必要があるのだろうと思いました。
まず、日本はスポーツを産業として発展させていく上で、観客を呼び込み収益を上げるという基本的な取り組みをしっかりこなす必要があります。
そしてその取り組みを行う上で、できれば選手自身もどういう形であれ観客を楽しませるという意識でプレーしてほしいと思います。
そして、興行主(運営側)は「観客が増えて収益が上がった!良かった!」で終わらせずに、その先にある環境改善や金銭的意味の「選手への還元」を念頭に、各取り組みを行ってほしいと切に願っています。
NYC Sports Report
2018年6月からの3か月間、ニューヨークに滞在中に訪れたスポーツイベントや施設などをお伝えいたします
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